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先生ご自身も、その光の美しさにもう30年以上魅了されているわけですが。
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大場
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タルとの出会いは、横須賀市自然・人文博物館を創設された恩師の羽根田弥太博士に、研究してみないかと勧められたのがきっかけです。『ファーブル昆虫記』に憧れたくちですから、虫なら何でもよかったのですが、取り組んでみるとこれが非常に奥深い。以来、ホタルひと筋です。30年間研究してきてわかったのは、わからないことがまだまだあるということ。とりわけ発光の不思議はいわば「地球の奇跡」であり、私の好奇心と探究心を限りなくかきたててくれました。こうした感動体験を、観察会などを通じて多くの人々と共有することができれば、かけがえのない環境を次代に伝える第一歩になるのではないでしょうか。
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ところで、先生はホタルと会話を交わすことができるそうですね。
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大場
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タルの成虫が点滅するのは雌雄間のコミュニケーションを図るためですが、長年、国内外でフィールドワークを重ねた結果、その発光パターンがかなり明らかになってきました。だから、発光ダイオードなどでオスのシグナルを人工的に再現し、本物のメスを誘う、というようなことも、やろうと思えばできるわけです。オスがメスを探して飛ぶとき、同じゲンジボタルでも、東日本では光り方がのんびり、西日本ではせっかち、そういう“ホタルの方言”までわかっていますからね。しかし水辺に映えるその光の乱舞は、まさに生命のシグナル。私には、危機に瀕する環境下で必死に子孫を残そうとするホタルから、人間への警告のように思えてなりません。
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