じつは、あの映像は当初、番組を作るために撮影したものではありませんでした。明治神宮では2011年に大規模な生物調査がおこなわれまして、その記録映像として撮影したものです。撮影しているうちに、生き物の営みはもちろん、一途な研究者の生態(笑)、明治神宮の森がつくられたいきさつなど、あまりにも面白いエピソード満載だったので番組の企画を立ち上げたんです。撮影は4年間におよびました。
都心最大の緑地は皇居ですが、その皇居では、すでに1996年から5カ年かけた生物相調査が国立科学博物館の主導でおこなわれ、りっぱな調査報告書が出ていました。ほかに都心の主だった緑地である赤坂御所、新宿御苑、自然教育園などでも過去に生物調査が実施されていましたが、明治神宮は皇居に次ぐ規模の緑地であるにもかかわらず、鎮座50年を迎えた1970年に植物と土壌生物と鳥類に関して生物調査が実施されただけで、それ以外の動物についてはまったくの白紙状態でした。明治神宮の森は原則、参道以外立ち入り禁止ですから、どんな生き物がいるのか、誰も知らなかったんですね。
調査は、立ち上げからお手伝いさせていただいたのですが、その実現までには、組織づくりや資金の面などいろいろと難関がありました。実際、もうダメかと思ったときもあります。でも、なんとか乗り越えて、40年来の虫仲間で自然環境調査のエキスパートである新里達也さんが取りまとめ役となり、2011年から1年間(一部は2年間)かけて「第二次明治神宮境内総合調査」が実施されることになりました。