|
── |
養蜂家にしてハチ駆除の名人、市川市在住の松丸雅一さんが一年で一番忙しいのは、地元特産のナシが旬を迎える秋の盛りだ。スズメバチの被害が頻発し、駆除の依頼が殺到するからである。依頼は多いときで年間300件。大半が9、10月に集中するという。 |
松丸 |
ピーク時には、一日に10件近く回ることもあります。なぜそれほど秋にスズメバチの被害が多いかというと、春に女王バチ一匹で作り始めた巣が秋口になると巨大化し、巣内のハチの数が爆発的に増えるんです。しかもこの時期は、次の世代の女王バチを作るため、幼虫に大量のエサを与える必要があるので、働きバチは獲物を探して活発に飛び回ります。スズメバチの幼虫は昆虫が主食です。だから攻撃性が強く、人にも襲いかかってくるんです。 |
前日に駆除したコガタスズメバチの巣。巣室に“蜂の子”(幼虫やサナギ)が詰まっている
|
|
── |
秋が深まり、エサになる昆虫が減ってくると、ミツバチなど小型のハチの巣を集団で襲うことも珍しくない。スズメバチが養蜂家の天敵とされるゆえんだ。 |
松丸 |
ミツバチをよく襲うのは最も大型で獰猛なオオスズメバチです。巣箱に入られたらもうダメ、あっという間に二、三群が全滅してしまいます。私が養蜂業のかたわら駆除の仕事を始めたのも、育てていたミツバチを襲われたのがきっかけでした。市川は都心近くで、いまなお貴重な自然を残す地域ですが、やはり宅地開発が広がるにつれ、棲み家を追われたハチが人間の生活圏にまで出てくるようになったんですね。最近は意外な場所で巣を発見することが多くなりました。たとえば、人の足音がドンドン響くような家の床下です。オオスズメバチの女王バチはすごく神経質で、本来、そういう場所には営巣しないはずなんですがね。だから住民の方も、まさか危険なスズメバチが、そんな身近にいるなんて思いもしませんから、知らずにハチを刺激してしまうんです。 |
| |