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木が離れる瞬間、「スキがあると木に殺(や)られる」という
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伐った木は材木商を介して市場に出る。高値がつけば空師も潤うが、材木としての価値は伐り方ひとつで大きく変わる。
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熊倉
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「売れるのは真ん丸でまっすぐの丸太ですが、伐ってみて腐りが入っていたら、タダになってしまいます。だから立ち木の状態でその中身を読み、どこでどう切れば価値が上がるかを見極めなきゃならない。全体の枝ぶりから樹齢、傷の有無、土地の日当たりや水はけまで調べて、判断するんです。それでも、いい木だと思って伐ってみたら、中が空洞だったなんてことはよくあるし、その逆も珍しくない。根元が完全に枯れていて、これは薪にしかならないと思いながら伐った木が、思いがけず元気で儲かったこともありました。とにかく木は奥が深い。20 年近く接していても、まだまだわからないことだらけですよ」
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しかもここ数年は、樹木伐採の現場に、熊倉さんも経験したことのない異変が起きているという。
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熊倉
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「伐採はもともと冬場の仕事。寒い時期は木が水分を吸い上げないから、材木にしたときに反りが出ないんです。ところが最近は暖冬が影響しているのか、早い地域では1月末から、ケヤキが水を上げ始めている。最初は幹の断面から水が滲み出しているのを見て、目を疑いました。水上げの時期が早まると、我々の掻き入れ時も短くなってしまいますからね。それに、昔より登りにくい木が増えた気もします。たぶん木の成長が早くなったせいでしょう。早く大きくなった木は目が粗く、表皮が剥がれやすい。靴の爪はひっかからないし、幹に回す胴綱も上がっていかないので、我々にとっては厄介なんですよ」
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