三代目の祖父は話術の人で、鳴きまねのネタは20あるかないか。意地悪なお客様からのリクエストで「ゴキブリ」なんてお題を頂くと、「ホイホイ」と切り返す洒落っ気が魅力でした。祖父の真似をしても、勝ち目はない。自分らしい芸を追求しようと考えた父は、新しいネタを探して各地の野山を訪ね歩く中で、野鳥への関心を深めていったのです。それはもう芸人というより、研究者さながら。国内外で野鳥のメッカといわれる場所には私もよく同行し、いろいろなことを学びました。その一つが「音を観る」という姿勢です。鳥の鳴き声を聴いただけでわかった気になっちゃいけません。ちゃんと実物の姿を観て、囀るときの筋肉の使い方や息遣いまで観察しないと。そういう野生の息吹を体感して鳴きまねをするのと、知らずに鳴くのとでは、芸のノリも、お客様の反応も全然違ってきますからね。