生まれた子が1歳まで無事に育つ確率は25%といわれています。天敵のシャチはこの海にはめったに来ませんが、台風や冬の嵐、それにオスのラッコの脅威も大きい。他の動物にも見られるように、オスが、子育て中のメスの発情を促すために子供を傷つけるのです。育児期間はおよそ6カ月ですが、母親がなぜか本来の子別れの時期より早く、子供を手放してしまうこともあります。そうなると、子供が1頭で生きていくのは難しいでしょう。
ある日の朝、岬から「ミギャー」と大声が聞こえてきました。行ってみると、泣き叫ぶ子供のまわりに、母親の姿はすでにありませんでした。それが子別れ。あっけないものですよ。
現在、霧多布にはメスが全部で5頭います。最初の2頭とその娘が2頭、そこへ昨秋から新しい大人のメスが加わりました。徐々に増えているものの、彼女たちがこのまま棲み続けるかは予断を許しません。