私はもともと高分子物理学が専門で生物学にはほとんど関係がなく、大学院を出た後は製紙会社に勤務していました。貼ったり剥がしたりできる付箋が登場した当時、その分野の最先端技術は粘着。会社で私も研究に携わっていたとき、粘着における世界のトレンドについてまとめていました。粘着と関係あるクモの糸についても調べだしたところ、なんだか粘着よりクモの糸のほうが面白い。当時クモの研究はほとんど分類学的にしかおこなわれていなかったので、独自で研究を進めてみることにしました。仕事になるとは思えなかったので、まったくの趣味、ライフワークとして取り組み始めたんです。私は旅行が好きなので、クモ研究を口実にすれば全国さまざまな地方へ遊びに出かけられそうという気持ちもありました。