現在、日本にいるコウノトリのほとんどには足環がついており、個体識別番号がわかるようになっています。番号はコンピュータに記録され、近親交配にならないよう管理されています。交配や放鳥の際にはできるだけ遠い血筋の鳥同士でカップリングできるよう、全国各地の動物園と連携を図ります。相性の問題もありますから、毎回複数のお見合い相手を用意して様子を見ながら同じ飼育部屋に入れるなどの工夫を飼繁殖用のドーム状のケージのなかではペアが飼育されている育員がおこなっています。
血統を増やすための試みとして有精卵の交換もしています。コウノトリは通常3~5個の卵を産むのですが、これらが毎年すべて成育しても同じ血統の子孫ばかり増えてしまう。喜ばしいことである反面、血統の管理上は問題が生じるため、卵をそっと取り除き、国内の動物園から譲り受けた有精卵と入れ替えるのです。これにより様々な血統のコウノトリを、遺伝的多様性を維持しながらバランスよく繁殖させたり放鳥したりすることができるんです。
最近では里子を育てさせることにも2例成功しています。野生のペアの一羽が事故で死んでしまったため、ヒナを保護して飼育下のコウノトリに育てさせたのです。野生では、親鳥が一羽になってしまうとヒナが生き延びることは非常に難しくなります。餌を取りに行っている間になわばり内に侵入した他のコウノトリに狙われるためです。コウノトリは基本的に一度定めたペアと一生を添い遂げますが、ペアの相手もヒナもいなくなった個体は「再婚」することもあります。