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園内は自然飼育エリアと研究飼育エリアに分かれているが、2つのエリアの中央、木立の茂る場所には、両生類の希少種も自然飼育されている。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されたカスミサンショウウオだ。県内に生息地は2カ所のみ。そのうちの1カ所はなんと住宅地に隣接する駐車場の側溝。そこが産卵場所になっていたという。
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楠田 |
淡水生物園を作るとき、淡水生物の水族館「アクア・トトぎふ」や市の自然環境課、岐阜高校でカスミサンショウウオの保全活動をしている人たちと知り合いまして、「もし生息地の環境が激変してサンショウウオが棲めなくなったら、市内の生息数はゼロになる。万一のために淡水生物園を“保険地”として使わせてくれないか」と相談されて。園のまんなかは日陰だし、生息にはちょうどよい。空いているので、ぜひどうぞと。岐阜市役所と岐阜高校の生徒たちは、毎年、生息地からすべての卵嚢を回収して高校の実験室で孵化させ、上陸する直前まで育てて、それを現地へ再放流するという活動を2007年から続けていたんです。園に放流されたのは2011年からですが、その後幼生が発見されているので、順調に繁殖しているようです。 |
ゾウの直腸で体温を測る楠田さん。人間と同じように基礎体温から性周期がわかることを発見した
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淡水生物園の研究飼育エリアの水槽では、ミシシッピアカミミガメも飼育されているが、あくまでも研究用だ
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本来の生息地に何か起きて、種が存続できなくなる事態を見越して、生息地以外の場所を確保し繁殖させる……淡水生物園は、ニホンイシガメやカスミサンショウウオを絶滅させないための、いわば保険としての役割を担っているのだ。
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楠田 |
私の専門の動物繁殖学というのは、家畜・家禽の繁殖と同時に、哺乳類・鳥類の種の保全という命題も与えられています。近年は動物園がこの「域外保全」の役割を果たしています。日本がワシントン条約に加盟した80年代頃から動物の輸出入が厳しくなり、世界の動物園は、それまでの、飼育して展示するというあり方から、展示を続けるには繁殖させなければならなくなった。少ない数のなかからいかに効率よく繁殖させるか。私の研究室では、繁殖の難しい動物の一種であるゾウなどの妊娠判定などをしています。妊娠の兆候をとらえるのは容易ではないので、おもに性ホルモンの変化を分析して判定しますが、人だったら採尿や採血ができるけど、ゾウはそう簡単にさせてくれない。そこで糞で代替させて、ホルモンの代謝物を測定するわけです。私たちがかかわったなかで、2013年に東山動物園で生まれたアジアゾウのさくらは、その代表的な成功例です。目下、アカミミガメがなぜこんなに増えるのか、イシガメがなぜ増えないのか、こういった生理学の手法を使って解明できないかと。 |
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