猛禽類と出会ったのは小学校1年生のとき、父の仕事の都合で過ごしたタイでした。マーケットで間近に見て、その存在感に圧倒されたんです。帰国後、父にねだり、ハヤブサの仲間のチョウゲンボウという鳥を買ってもらったのですが、当時は飼い方を理解していなくて、2年ほどで死なせてしまいました。そのときは本当に辛かったです。次に飼ったのがハリスホーク。「桃太郎」と名づけて、いまもいっしょに活動する大切なパートナーです。父の知人の協力を得て海外の文献などにもあたりながら、少しずつ猛禽類について理解していきました。ある日、毎年カラスの被害に遭って困っていた祖父のスイカ畑で、試しに桃太郎を飛ばしてみたら、カラスがいなくなったんですよ。その年は豊作でした。そのうわさを聞いた近在の農家さんたちのところにも呼ばれるようになりました。うちも農家だったもので苦労がよくわかるだけに、感謝されてすごく嬉しかった。その経験が私たちの害鳥対策の原点です。しだいに地域で評判になり、依頼を受けるようになったんです。
最初に飼ったハヤブサを死なせてしまった経験から、高校3年の中ごろまでは、タカを扱う獣医師になるのが目標でした。でも、大学の獣医学部へ進むとなれば、家を出て佐賀を離れ、桃太郎や他の鳥たちと離れなければなりません。また、鳥の被害に苦しむ人たちも、タカが飛ばなくなって困ってしまう。そう考えて悩みました。