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荻町ではこうして伝統的な結が姿を消すいっぽう新しい結のかたちが見られるようになった。葺き替えの準備や下地作り、あるいは屋根葺きの途中までを業者に任せ、できる部分を村総出の結でおこなったり、合掌の家々が結成した組合で本来は一日で済ます葺き替えを、1週間ほどかけておこなったり、地元の中学生や全国のボランティアの力を借りたり……こうした手法は、伝統的な結と区別して「現代結」とも呼ばれる。ただここでいう業者(、、)も技術を習得した地元の住民だから、完全な外注とはいえない。和田さんの息子の茂さんも屋根葺き職人だ。いまや若い弟子も増え、技術の伝承につとめている。
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和田 |
合掌の家は、ご先祖様が人様の力を借りて建てたもの。自分も大勢の人に助けてもらわなければなりません。だから「自分の家だけど、自分だけの家ではない」とみんなが思っている。その気持ちが結の原点でしょう。その思いさえなくさなければ、たとえ形は変わっても、結の精神は残っていく。守るというのは、形ではなく心の問題なのです。ふるさとに誇りを持ち続けるためにも、この結の精神を守り続けることが大切だと思います。
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屋根の上の飾り茅は、縄を腐らせないよう毎年入れ替える。家の見栄えをよくするため置き方にもそれぞれ工夫がある。立っているのは若き日の和田さん
一面に茅が生い茂る村の茅場。これでも1軒分の屋根にはとうてい足りず、他の村から調達する。
Profile
わだ・としはる 1933年生まれ。白川村荻町に生まれ、17歳から合掌造りの屋根葺きに携わる。30代後半から棟梁的な立場である「片切師」として活躍、後進の育成にも力を注ぐ。自宅は築110年以上の合掌造り。民宿「わだや」を経営。 |
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