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日本発の実用地熱発電所である松川地熱発電所。八幡平周辺の約6万世帯に電気を供給している
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染色を専門に勉強したことはないという高橋一行さん。子どもの頃から母親の陽子さんが創始した地熱染めを手伝いながら育ったという。
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高橋
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「もともとは、アートフラワーをライフワークとしていた私の母が染色に地熱の蒸気を使ってみようと閃いたのが、地熱染めの始まりでした。蒸気は地下1000〜2000mから取り出されたものです。山の中で育った私は幼い頃から工房で仕事を手伝ってきましたので、染色技術は自然に覚えてしまいました。学校の宿題も工房の中でしたものです」
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十和田八幡平国立公園の中にあるこの一帯は火山地帯である。地下1kmも掘れば、マグマの熱で温められた200度以上の熱水や蒸気が含まれる地層に当たる。「八幡平地熱蒸気染色」は、火山の恩恵によって育まれてきた染織工芸といえる。地熱染めの特徴は、どんなところにあるのだろう。
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高橋
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「地熱染めには『絞り染め』技法を応用しています。折り畳んだ生地を糸で緩く縛り、一度に複数の染料に漬けることよって、中に様々な色を染み込ませます。色が混じり合うと濁った汚い色になりますが、その状態で釜入れして高温の地熱蒸気にさらします。蒸気にさらすのは色を定着させるためですが、普通の蒸気では濁った色のまま定着してしまいます。ところが、ここの地熱蒸気に含まれている微量の硫化水素には脱色効果があるのです。この脱色作用によって、濁っていた色から余分な色が抜け、染料が適度ににじみ出して予想以上の美しい色味を醸し出します」
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