それに気づいたのは、史上最高齢でエベレストに登頂したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんの話を雑誌で読んだときです。彼は子どもたちに自然のすばらしさを伝えたいのに、林間学校に来た子たちは、嫌々山に登らされて、「こんなところ二度と来るもんか」と思って帰っていく、残念だ、というのです。 生きがい療法というのがあって、がん患者さんたちがモンブランに登頂した例がありますが、あれは困難を乗り越えることが目的であって、山に癒しを求めに行ったわけではないんです。ストレスケアのために森に行く場合は、むしろ「何かを達成する」という目標をかかげてはいけない、ということに気がついたのです。目標を設けたのでは、ストレスの原因になっている企業社会と同じことになってしまいます。森では、ただのんびりと過ごし、ちょっとしたキャンプや、ネーチャーゲームを楽しめばいい。自然が好きになって、また森に行きたくなれば、癒し効果が現れた証拠です。
小金井市の大学構内でおこなわれたワークショップにて。自然の素材を使ったネーチャーゲームも森林療法のひとつ
|